2008年10月26日

秋の小話2-2

ピアノで歌うのを気に入っているこの女性、来るのはたいてい12時過ぎです。
いつもは、一緒の紳士な男性が閉店時間を気にしてくれます。
どちらかと言えば、この女性はズルズルタイプ。
「もう一杯だけ、もう一曲だけ 」
みなさんの身近にもこういう方、いらっしゃるでしょう。
なまじっか美人なだけに・・・

年齢も近かったせいか、もう一組の水商売カップルと意気投合、交代にピアノで歌うという展開、
同業の二人は、さすがお互い様、閉店時間を気にしてくれます。
彼らも、彼女が来る少し前に来たばかりなので、この状況で1時閉店は酷だろうと30分延長を告げました。
普通ならここできれいに収まる、「マスター、どうもありがとう」で終われるのですが、
そうはいかない時があるのも、この世界ならでは。
水商売カップルは、会計を済ませて、「また来ます」と笑顔で出ていきました。
さて、次は問題の女性の会計。
2杯飲んでいます。入ってくるときの「1杯だけ」というのは、ご挨拶。
こちらも追加を頼んでくれたのはありがたい事、それもあって時間を延長しています。
先に帰った水商売カップルは、このややテンションの高い女性を上手に乗せてくれました。
このあたりは手慣れたもの、どう扱えば良いかは熟知しているのです。
最後の歌、いわゆるトリも彼女にとらせます。
彼女を中心に、店の営業は回ったのです。
いろんな方が居合わせるAMANEのような店では、どうしてもお互いの気遣いが必要になります。
それは平等でなく、誰かに偏りがちな時も往々にしてあるのです。
テンションの高い方、つまり目立つ方には周りが自然と気を遣います。
ですが、おもしろいことに、当の本人はそれに全く気付いてなかったりする・・・

「じゃ、お会計を。2,●00円です 」
予想されたセリフが戻ってきました。
「もう一杯だけいい ?」
空いたグラスを指さして言います。
そして「マスター、一緒に飲もうよ 」
ほらね。
「ダメですよ、もう、おしまい 」
「そんな、冷たいこと言わないで〜 」
「ねっ」
押されます。
「ダメ。もうおしまい 」
「どうしても ? あと、10分だけ 」
食い下がります。
「ダメですよ。帰ってください、会計は2,●00円です 」
何とかなると思ったのでしょうね。
他ではそれが通用したのかも知れませんが、うちではそうは行きません。
AMANEを開店した時からの決め事だからです。お客様と飲むことはありません。
「ごめんなさいね」と一応謝ります。
それで聞き入れて「はいはい」と帰ればかわいいのですが、そう甘くはない。
「わかったわよ」
「お金払います、はい、2,●00円 !」
声色が変わっています。
そして次のセリフ。
これはみなさん、おわかりですね。

「もう来ません 」
(哀)

それでも僕は「はいはい。ありがとうございます 」と見送ります。
それがこの商売の、深夜にお酒を出す商売の鉄則だと思うからです。
お客様にも、自分にも、どんなときにも「ありがとうございます 」が締めの言葉。
区切りです。
だから次に向かえるのだと思います。
さて、今夜は、何が起こるかな ?

第3話につづく
posted by セキシュウ at 20:09| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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