パーティーが終わった時間はかなり激しく降っていました。
お帰りになるみなさんには申し訳ありませんが、この雨は僕にとって幸いでした。
テーブルの上を片付けないと一般営業に入ることが出来ません。
急いで片付けても、30分はゆうにかかる。
その間にお客様が来たら申し訳ない、でもこの雨ならまず来ないだろうと思ったからです。
常連さんがいらっしゃる水曜日や金曜日、土曜日でなかったのもラッキーでした。
もしこのパーティーが土曜日なら、回転のことを考えてヘルプを頼まなければならなかったでしょう。
ひとりでノンビリ片付けている時間なんてありません。
土曜日、ライブの時はひとりですが、出ているのはグラスだけ。
下げるのはあっという間。
今回は料理のお皿がイヤっていうほど出ています。
各テーブル(4卓・2卓をくっつけて1卓にしています)に大皿で出して取り分けるスタイルですから、
それぞれ、少しずつ残っているのです。最後の1個などは、みなさん遠慮して食べないものなのです。
料理は、1個、2個どころか随分残りました。
「お口に合わなかった」わけではないと思います。多目に出したのです。
年配の方が中心で、そんなには食べないだろうと思いましたが、
万が一足りないなんてことになると、これほどみっともないことはありません。
「料理がこれっぽっちしか出なかった」
そう言われるのは致命傷です。余った方がよっぽどマシです。
数人ならいざ知れず、20人近くのお腹の入り具合を計るなんて無理です。
まして、お酒を飲みながらです。
最初ツマミながら、後ガツンと食べるタイプ、最初腹ごしらえして、チビチビ飲むタイプ、
いろいろなタイプがあるのです。
お腹にたまるものを最後の方まで出しておく必要があります。
否応なく、余ってしまう。
もったいないとは思いますが、ここは目をつぶらなくてはいけないところだと思います。
とは言ったものの、「ちょっと出し過ぎたかな」と誰もいなくなった店内を
見渡していた時に電話が鳴ったのです。
「はい、ミュージカンテアマネです」
「・・・もしもし」
馴染みの声です。
美声の友人です。
電話に出た後の数秒の間(・・・)は、彼独特の間です。
「どうしたの ? 今、パーティー終わったところ」
「散らかっているけど、来れば ?」
友人ですから、片付けているところに来てもらうのに、何ら支障はありません。
10分か、15分か後。現れました。
「これこれ」と言いながら僕に差し出しました。
本です。
以前から、「読ませたい本がある」と言ってたのを、持ってきてくれたのです。
彼から本を渡されたのは初めてでしょう。
「本、読む時間ある ?」
「あるよ (笑) 」
その日、早速帰ってページをめくりました。
タイトルと大筋は聞いていました。いわゆる「成功の秘訣本」です。
開けて最初に飛び込んできた文字、
「出会いは決して偶然ではなく・・・」
あれ ?
これ、普段僕が使っている常套句 ?
本の中の主人公(筆者のようです)は、脱サラして独立、飲食店を始めるのですが
畑違いだったこともあり苦しんでいたところに、ある人と運命の出会いをします。
主人公がその人を通して成功の秘訣を学んでいく、つまりそれを僕たち読者に伝えていくという仕組みです。
本の帯には『なぜゼロから大成功したのか』というキャッチコピーが躍っています。
読みながら美声の友人のことを思いました。
本の内容以上に、彼の気持ちが僕に力を与えてくれたのは言うまでもありません。
そして、その日のパーティーを「ひとりでこなした」といい気になってた自分が恥ずかしくなりました。
実際動いたのは僕ひとりですが、そこにいくまでには、彼を始めとする周りの応援や、
サポートがあったからこそ出来たのだということを忘れていたからです。
人は鍛えられていきます。
だから、勝負する気になるのです。
挑戦できるのです。
ただ、鍛えるにも勝負するにも「相手」あってのこと。
「相手」に感謝することなくして、本当の勝負師とは言えないでしょうね。
おわり


